本課題は従来のオレフィンの配位重合触媒やメタセシス触媒で達成できない、高機能有機材料の創製を可能とする高性能分子触媒の創出を主目的とする。特に期間内は5価のバナジウム錯体に注目し、オレフィンの配位・挿入やメタセシス反応の鍵中間体である金属-アルキル、アルキリデン錯体の合成・反応性に関する研究を通じ、高性能触媒の設計・創製を目的とする。平成19年度の成果は以下の通りである。 アリールイミド及び各種フェノキシイミン配位子を有するバナジウム錯体を合成・同定し、その構造をX線構造解析で決定した。この錯体はメチルアルミノキサン助触媒存在下、エチレン重合に高い触媒活性を示し、活性はフェノキシ酸素に隣接する置換基の影響を強く受けた。 アリールイミド配位子を有するトリアルキル錯体、V(NAr)(CH_2SiMe_3)_3、を合成・同定し、同錯体とアルコールやフェノールとの反応により、高収率で対応するジアルキル(アルコキソ、フェノキソ)錯体を合成・同定した。得られたジアルキル錯体は、PMe_3存在下、ノルボルネンの開環メタセシス重合に高い触媒活性を示した。この結果を基に、C_6D_6溶媒中でジアルキル錯体を加熱することで、金属-炭素2重結合を有する錯体の合成・同定に成功した。ここで合成したアルキリデン錯体は、バナジウムで初めて環状オレフィンのリビング重合を進行させた。一方で、上述のトリアルキル錯体とアミンやチオールとの反応は進行せず、バナジウム錯体独自の反応性・特徴が現れた。現在トリアルキル錯体の反応性を詳細に検討している途上である。また、成果をまとめて論文投稿しているところである。
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