昨年、我々は分散力について改良した密度汎関数強結合法(DFTB-D法)を広範囲にわたって応用した。モデルシステムとして、異なるカイラリティーの巻き方を持つ2層カーボンナノチューブやC60内包したC240カーボンオニオンC60@C240を採用し、理論のベンチマークとして基底関数重ね合わせ誤差(BSSE)をCounterpoise補償法で補正したResolution of Identity MP2法(RI-MP2法)を使用した。現在、我々は同じモデルシステムに対してLC-BOP密度汎関数法を使用した更なるベンチマークを行っている。このベンチマークを円滑に実行するために、我々は東京大学の常田教授との協同に入り、研究室のクラスタ計算機にはGAUSSIANプログラムに基づく計算コードをインストールした。これらの研究から準備段階の結論として、カーボンに対する標準的なDFTB-Dパラメータはナノカーボンに対して分散力を約10-20%過剰に見積もっているようであるが、例えば異なるカイラリティーを持つ同じ長さのナノチューブのような、同サイズのモデルシステムに使用された時は、定性的な比較のために問題なく使用可能であることが得られた。 さらに、我々はDFTB-D法とRI-MP2法を使用してアセトンとグラフェン間の分散力による相互作用をベンチマークし、TPD-MS法を用いた実験で測定される脱着温度に対するスペクトルピークの帰属を提案した。:すなわち、高い脱着温度でのピークは小さなナノチューブの内側での吸着に、中間の脱着温度でのピークは大きなナノチューブの内側での吸着に、そして低い脱着温度でのピークはナノチューブの外側での吸着に対応する、というものである。
|