研究概要 |
有機光電変換系における有機材料の基礎的知見を得ることを目的として、下記の結果を得た。 正孔輸送材料として広く知られているTPDのHOMOとコンホメーションの相関について、密度汎関数法(DFT)によって検討した。中央部のビフェニレン基と窒素とをつなぐ結合のねじれ角αを0°から90°に変化させるとHOMOはビフェニル基から、窒素および末端のトリル・フェニル基に徐々に移って行くことがわかった。また、α〓60°においてHOMOが分子全体に非局在化していることがわかった。今後、HOMOがビフェニルに局在化している状態(α〓40°)、分子全体に非局在化している状態(α〓60°)、分子の末端部位に局在化している状態(α〓100°)のいずれの状態が分子間ホッピング伝導に好ましいか、実験的に得られた非晶TPDの分子間パッキング構造に基づき計算を進める予定である。 ポルフィリン誘導体とC_<60>を用いた有機太陽電池系に関して、IPCE値が59%という高い特性が得られている。一方で、ポルフィリン誘導体における置換基をわずかに変えただけでその特性は大きく低下する。この原因を明らかにするため、固体NMRにより分子レベルでの構造を明らかにすることを試みた。その結果、非晶膜中で、IPCE値の高い系において、ポルフィリン誘導体-C_<60>間でそのモル比が1:2,1:1,2:1および3:1の化学定量比を保持した超分子構造が形成されていることが明らかとなった。この結果は、DFT計算からも支持された。また、これらの超分子化によりポルフィリンからC_<60>へ電子が移動していることも明らかとなった。一方、IPCE値の低い系では超分子化は発達しておらず、有機太陽電池の特性変化の原因を明らかにすることができた。本研究は、本特定領域内の、京都大学工学研究科今堀教授との共同研究として推進した。
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