本研究では、黒潮及び黒潮続流域における海洋二酸化炭素分圧の季節変化を厳密に評価したのち、その経年変化、二酸化炭素吸収の変動を再評価し、同時に海洋炭酸系変動の原因の解明も試みることを目的としている。この目的は、黒潮及び黒潮続流域が、太平洋で大気中二酸化炭素の最も強い吸収域となっていることと、表面海水中の海洋二酸化炭素分圧の増加率の計算結果が研究者間で2倍程度異なっているために設定した(増加率評価の差は、海洋が大気から吸収する二酸化炭素量の評価に大きな不確定性を生じることとなるため)。今年度は、まずこれらの海域における海洋二酸化炭素分圧の季節変化及び経年変化を明らかにするための既存データの統合と、過去データの検証を行った。既存のデータについては、大気から海洋への二酸化炭素フラックスを黒潮及び黒潮続流域について決定する方法を開発し、その季節変化を明らかにし、学術論文にまとめ、投稿した。また、台風通過時の海洋炭酸系の変動を既存のデータとモデルを組み合わせて明らかにし、その解析結果についても論文に投稿中である。1980年代のデータは、炭酸系を支配する要因のひとつである水温との関係や、既存データとの比較などにより新たに二酸化炭素データバースに加えることが可能であり、経年変化の評価に大きく貢献することが分かった。炭酸系の変動に関しては、水温や塩分、溶存酸素、栄養塩、全炭酸、全アルカリ度、炭素同位体等のデータを含めた解析を行い、海洋の二酸化炭素分圧、ひいては二酸化炭素フラックスの変動要因を現在解析している。
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