研究概要 |
2007年4月,5月,6月,10月および2008年1月に,北海道区水産研究所の親潮域の定期観測ライン(Aライン)において,表層鉄濃度の観測を行った。この親潮域における周年を通した海洋観測データに,2003年度から蓄積しているデータを加えて,新潮海域における表層鉄濃度の季節的な変動を明らかにした。微量栄養物質である鉄分は,秋季から冬季の混合が活発な時に下層から付加され,春季の植物プランクトンブルームに利用され減少し,夏季にほぼ枯渇し,再び秋季から冬季にかけて濃度が高まることが明らかとなった。また,北海道区水産研究所(釧路),手稲山山頂,において大気エアロゾルのサンプリング装置を立ち上げ,季節的な変動を確認するサンプルの採取を開始した。さらに,2回の親潮域での航海において,大気中エアロゾルの粒径別のサンプルの採取を行った。今後これらのサンプルを利用して,海水への溶解率を求め,大気からの鉄供給の季節的変動を,明らかにする予定である。現時点での解析では,親潮域表層の鉄濃度の季節的な変動と,大気ダストのイベント発生回数との関係には有意な相関は見られていない。上記に加えて,室内実験において大気ダストの溶触率を調べるための,実験装置を組み上げた。予備的な溶解実験の結果,大気ダストの一部である黄砂の溶解率は約〜2%であった。
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