本研究では、本邦周辺海域及び南北太平洋における好気性光合成細菌の分布、多様性、現存量を明らかにすると共に、炭酸固定への寄与、光による増殖促進の程度を明らかにすることを目的とした。本年度は、好気性光合成細菌の多様性と現存量について、時空間的な変動を明らかにするための研究を行った。空間的な変動解析を行うために、瀬戸内海、大槌湾、サロマ湖、西部北太平洋、太平洋赤道域、南太平洋、南大洋から採取した試料からのDNA抽出、BrdU標識DNAの免疫学的な分取を行った。また、これら試料について、細菌の光合成関連遺伝子pufMの定量PCRを行うために、好気性光合成細菌の探索、分離を試みた結果、岩手県大槌湾の海水試料より、4株の単離培養に成功した。16SrRNA遺伝子の塩基配列に基づく系統解析によってこれら4株の系統分類群を特定した。神奈川県真鶴沖(相模湾)に観測定点を設け、赤外線蛍光顕微鏡計数による毎月1回のモニタリングを実施したが、光合成細菌数は全細菌数の0.1%以下にとどまったことから、岩手県大槌湾に時系列観測点を変更した。その現存量の変動要因を探るため、2008年2〜4月の水温上昇及びブルーム形成時期における週単位のモニタリングを実施した結果、水温上昇に伴う現存量の増加を示唆するデータが得られた。また、2007年春の観測ではクロロフィル極大層におけるピークも観察されていることから、引き続きモニタリングを継続している。
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