平成20年3月および4月初めに沖縄辺戸岬において、吸湿特性測定用タンデムDMA(HTDMA)(DMAは微分型電気移動度分析器を表す)等を用いて取得されたエアロゾル観測データの一部に対して、本研究課題の一環として解析処理を行った。そして、乾燥状態および加湿状態におけるエアロゾル粒子の移動度粒径の測定値から、粒子の吸湿成長因子(乾燥時に対する加湿時の粒径の増加率)の分布を算出した。同観測では、複数の乾燥粒径において吸湿成長が測定されており、幅広い粒径範囲の大気エアロゾル粒子に対して吸湿成長因子の分布を得た。さらに、観測によって得られた吸湿成長因子の分布と、ケーラー式にもとづく水溶性成分の存在量および臨界過飽和度の推定値との対応を定性的に確認した。この粒子吸湿成長の分布は、大気エアロゾルの混合状態を反映していると考えられ、個数粒径分布の情報のみでは特定できない雲凝結核の有無について、知見を与えるものである。ただし、DMA伝達関数の分布幅の寄与についての考察は、将来の課題として残されている。なお、本研究課題における検討は、他の関連する研究プロジェクトにおけるエアロゾル粒子の吸湿成長・雲凝結核活性の解析とも結び付いている。 また、平成20年の夏季には、太平洋域において研究船を利用した大気エアロゾルの共同観測が行われており、北部北太平洋においてHTDMAと雲凝結核カウンタを接続して得られたエアロゾル観測データを利用して、予備的な解析を行った。
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