研究課題/領域番号 |
19030010
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高橋 嘉夫 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (10304396)
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研究分担者 |
清水 洋 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60090544)
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キーワード | X線吸収端構造 / 黄砂 / 炭酸カルシワム / 石コウ / 中和 / 電子収量法 / エアロゾル / 硫酸 |
研究概要 |
イオウとカルシウムのX線吸収端構造XANES)を用いて、酸性のイオウ化合物と黄砂中に含まれる炭酸カルシウムの中和反応を解析した。まずイオウK端のXANESからエアロゾル中でイオウはいずれも硫酸塩を形成しているが、吸収端後の構造から硫酸塩種が分かり、粒径が小さな粒子中のイオウの化学種は硫酸アンモニウム(NH_4)_2SO_4が主であり、黄砂粒子が含まれる大きな粒子中のイオウの化学種は石コウCaSO_4-2H_20が主であることが分かった。しかし、これまでの研究から石コウには、土壊等に存在している石コウが風で舞い上がりエアロゾルとなった成分の他に、炭酸カルシウムが大気中で硫酸などと反応して二次的に生成した2っの成分があると考えられた。そこでカルシウムK端のXANESを調べたところ、黄砂期では、砂漠からの粒子が多いため砂漠の鉱物組成を反映して、殆どのCaが方解石として存在しているが、非黄砂期では石コウの割合が増加していることが分かった。このことは、黄砂期では砂漠から供給される方解石が多いことと、中国では冬に硫酸を生成するSO_2の発生量が一般的に多いことから考えると、非黄砂期では方解石が大気中で硫酸を中和して石コウを生成したと推定できる。このことをさらに確かめるために、ヘリウム転換電子収量法(CEY)iで粒子の表面にあるCa化学種を調べた。黄砂期ではCEYで得たスペクトルは蛍光法で得たスペクトルと類似し、粒子の表面とバルクのいずれでもCaの化学種は主に方解石であったことが分かる。一方非黄砂期では、CEYで得たXANESスペクトルで石コウの特徴が顕著になっており、石コウが粒子表面でより多いと推定された。この結果は、黄砂期では砂漠のCa鉱物の組成がエアロゾル粒子の結果に反映されるが、非黄砂期では大気輸送中に方解石表面で中和反応が生じると考えるとうまく説明できる。
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