研究概要 |
(長期生態系変動)西部北太平洋における過去数十年の海洋環境と生態系変動の関係についてレビューした結果を論文にて発表した(in press)。特に90年代以降の温暖化傾向に伴う変化として親潮域における生物生産タイミングの早期化,温暖性種の分布の北進が顕著であった。同様の変化は東部北太平洋,北大西洋の亜寒帯域でも報告されており,地球規模の環境変動の影響が示唆された。 (衛星データによる生物季節的変化)1998-2007年の月毎の衛星海色データを用いて西部北太平洋の基礎生産の季節変動パターンを明らかにした。その結果,水温の上昇が植物プランクトンのピーク値に正に働く海域(ベーリング海・親潮混合域)と負に働く海域(アラスカ湾・黒潮海域等)が見られた。また同じく海色衛星データを用いて,北太平洋亜寒帯域における植物プランクトンブルームのタイミングの経年変動を調べた。その結果,ENSOスケールの変動が見いだされたがその関係は海域毎に異なった。例えば北西部及び縁辺部においてはエルニーニョ年にブルームが早まり,ラニーニャ年には遅くなったが,南東部沖合海域ではまったく逆の関係が見られた。これらの結果は,ある特定の気候フォーシングに対する海洋環境や海洋生態系の応答が海域毎に異なることを示すものである。これらの成果を国際学会にて発表した(PICES及びASLO/OSM)。 (船舶観測による表層生物過程の調査)9月に調査船「みらい」による物質循環観測に参加し,表層の動物プランクトンを採集した。現在群集組成,サイズ組成の分析を進めている。来年度はこれらのデータをH18年6-7月と来年度10月の観測で得たデータと併せて解析することにより季節変動を明らかにし,表層の動物プランクトン構造の変化と物質の鉛直輸送効率との関係について調べる。なお,本年度購入した動物プランクトン解析装置の納品が製造元の事情により2月になってしまったため(予定納期は9月)解析作業が遅れている。
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