本研究は申請者らが開発したナノ共振ずり測定法とFECO分光法の同時測定により、ナノメートルレベルの隙間に閉じ込められた2成分液体の静的・動的構造を調べ、閉じ込め、およびせん断という外場の影響下で発現する構造とダイナミクスの理解と制御を目的とする。本手法を色素/液体(液晶)2成分系に対して適用することで、2つの表面間に挟まれた色素/液体2成分系の組成と構造化・トライボロジー特性を表面間距離の関数として同時に評価可能である。 20年度には、これまでに評価してきた色素(Sudan Black B)/液晶(6CB)2成分系について、詳細なデータの取得と解析を行った。Sudan Black Bの仕込濃度0.06〜1.06wt%において、表面問距離6nm以下では色素濃度は仕込の数10倍まで増大した。この色素濃度増大に伴い、共振ずり測定からはStick-slip挙動が出現することが明らかとなった。これは。色素が濃縮すると、せん断速度の上昇に伴い、高摩擦状態から低摩擦状態への転移が起こることを示している。色素/液晶2成分系は潤滑によく用いられる潤滑油+添加剤のモデル系と考えられ、添加剤の効果を考える上で興味深い結果である。 また、新しいナノ薄膜評価法として開発した表面力/共振ずり測定・蛍光寿命同時測定装置を用いて、粘度に対して敏感に蛍光寿命が変化するシアニン色素をプローブとして、表面間に閉じ込められた液体薄膜中のさらに局所環境の評価を行った。
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