研究概要 |
球形粒子の結晶化に関する平均場理論(ランダウ理論)を基に,棒状粒子が立方対称の周期構造を形成する可能性について検討した,最も普通に見られるキュービック構造であるジャイロイド相(空間群la3d)の安定性,および関連した三重周期極小曲面(TPMS)であるP面およびD面で特徴付けられるキュービック相(空間群Im3mとPn3m)の相対的不安定性等を説明するとともに,空間群lm3mに属する新規構造の出現可能性を指摘した,このlm3m相はサーモトロピック液晶でのみ発見され,本研究課題の対象であるIm3m相であると考えられる。これまでTPMS関連構造はもっぱら連続体理論で取り扱われてきたが,異方性の強い粒子の集合体がジャイロイド相などの高次構造を形成する潜在的性向を有することを,はじめて明らかにした成果である. キュービック相を発現するBABHのIm3m相の小角X線回折のデータを用いて分子凝集構造の解析を進めている.この種の構造解析としてははじめて最大エントロピー(MEM)法を用いることとし計算コードを完成させた.MEMが用いられる通常の用途とは異なり,信頼できる構造モデルが無い状態で解析を行うため,少数の回折に対しては位相を含め,残りについては強度情報のみを用いることとした.上記の平均場理論の結果も参考にしながら,アルキル鎖長依存性を検討し,分子凝集構造の解析を進めている.この解析が完成すると,サーモトロピック液晶における分子凝集構造の解析例としてはジャイロイド相に次いで2番目となり,低分子サーモトロピック液晶におけるキュービック相の発現機構の解明だけでなく,ブロックコポリマーなどにおけるミクロ相分離構造の発現機構と安定性の解明に大きな貢献となると期待できる. 分子構造とキュービック相発現の関係を明らかにするために,ANBCのカルボン酸水素の重水素化を行い二量体の安定性を変化させて相挙動を検討している. 異尾根気体についてもガラス形成能などについても熱力学的な検討を行っている.
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