高分子のトポロジーに起因する絡み合い効果を、トポロジー的絡み合い効果とよぶ。環状高分子や高分子網目のトポロジーは合成の際に決定され、その後変化しない。本研究目的は、ミクロなトポロジーの違いがどのようにマクロな振る舞いに反映されるのかを明らかにすることである。 希薄溶液中に存在する結び目をもつ環状高分子の時間発展をブラウン動力学によってシミュレーションした。そして、拡散定数などを線形鎖と比較し、さらに結び目依存性を調べた。本研究の特徴は、流体力学的相互作用を取り入れたことである。また、時間発展の際にすり抜けが生じないように、FENEポテンシャルを設定した。 この結果、環状鎖と線形鎖の拡散定数の比は、重合度依存性が非常に小さいことが分かった。すなわち、こと拡散定数比ほ重合度に関してはほぼ一定と近似できる。 さらに、その比の値1.1は合成高分子の実験値にほぼ一致し、DNAの場合の実験値1.3と異なっている。さらに、拡散定数の結び目依存性は、理想結び目(ideal knots)の平均交差点数の関数として非常に良く近似できることが分かった。
|