非イオン性界面活性劇ラメラ相にずり流動を加えることにより非平衡構造であるオニオン相が形成される。本研究では、(a) 流動誘起ラメラ-オニオン転移におけるゲスト成分の添加効果、(b) 非平衡オニオン構造の成長ダイナミクスを粘弾性測定により調べた。トリブロックコポリマーと界面活性剤混合系の複合二分子膜系ラメラ相における平衡場相挙動は高分子濃度増加に伴い単調に変化し、Lα-L3転移点が低温側にシフト、L3相が広い温度領域に渡り安定に存在することが分かった。他方、流動誘起ラメラ-オニオン転移挙動は、低高分子濃度では促進され、高濃度では阻害されるという特異な挙動が観察された。この挙動は二分子膜面上に吸着した高分子間の排除体積効果によるミクロスケールにおける二分子膜の延伸に由来すると考えられる。低濃度では二分子膜の弱い延伸が流動場効果を受けやすい大きな波うちゆらぎを誘起する一方、高濃度では実効膜厚の増加に加え、過度の延伸がゆらぎを抑制するため膜が硬化し、オニオン転移挙動が濃度に依存し変化すると考えられる。平衡場と流動場での秩序相形成ではゲスト成分の影響による構造決定因子が異なることを示唆する結果を得た。また、流動場におけるオニオン構造の成長過程は連続・不連続成長を示し、その閾値はずり速度クエンチ時の初期ずり速度と最終ずり速度の比によって決まることを明らかにした。不連続成長過程のきっかけとなる最初のオニオン破壊過程はひずみの蓄積により生じ、その後のラメラ-オニオン再形成開始点はオニオン内部に蓄積された膜弾性エネルギーの散逸過程により支配されるという結果を示した。コロイド粒子を核に持つオニオン相ではオニオンの安定性が増したことより、オニオン破壊のドライビングフォースはオニオン内部における二分子膜の弾性エネルギー勾配であることを示した。
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