研究概要 |
溶媒中にある高分子ゲルの膨潤度は外力に対して敏感であり,平衡膨潤状態にあるゲルに外場を加えると収縮またはさらに膨潤する「応力場と膨潤の交叉現象」が知られている.本研究は,この交叉現象の大変形の破壊挙動に対する影響の解明を目的とした.具体的には物理ゲルの-種であるジェランの円柱状ゲル(高さ約10mm)を作製し,広範囲な圧縮速度(100mm/minから0.005mm/min)で圧縮試験を行ない破壊挙動調べた.また,圧縮の境界条件の影響を調べるために,ゲルの圧縮面を初期状態のまま変化しないように拘速した条件(C2)と拘束せずに自由に変形できる条件(C1)で圧縮した.測定中のゲル中の水の蒸発を避けるために流動パラフィン中(ゲルの非溶媒)で測定した.C1条件では圧縮速度が遅くなるとゲルからの離水が観察されたが小規模であり,どの圧縮速度でも圧縮途中でぜい性的に破壊した.一方,C2条件では0.01mm以下の圧縮速度になると多量の水の流出が観察され,90%以上の圧縮ひずみでもマクロ破壊しなかった.ディスク状にまで高圧縮されたゲルを水中で再膨潤させると,C2条件でひずみ集中が起こる中心部で真っ二つにゲルがマクロに分離した.これらのことから,C2条件ではミクロな亀裂がひずみ集中が起こる中心部に集中し,さらに水の流出が起こってゲルが濃縮されることによりゲルが強靭化したことがわかる.一方,C1条件ではひずみが均-であるため,ミクロな亀裂がすぐにマクロな亀裂に進展するため高圧縮できないと考えられる.また,同-ひずみで応力緩和挙動を比較するとC2条件の方がC1条件よりも緩和量も水の流出量も圧倒的に大きいことも上記の考察を支持する.高分子ゲルの圧縮破壊モードが圧縮速度と境界条件に強く依存し,「脆性破壊挙動」から「多量の水を流出してマクロ破壊しない高圧縮挙動」まで変化することを実証することができた.
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