ブロック共重合体はブロック鎖の自己凝集によりミクロ相分離構造を形成する。このミクロ相分離構造には、球、シリンダー、ジャイロイド、ラメラといった構造があるが、それらはバルク中(三次元空間中)での構造である。我々はミクロ相分離構造の性質をより詳細に考察するため、さらには工学的応用を視野に入れ、表面近傍での構造を明らかにする必要があると考えた。当初の予定では、ブロック共重合体とホモポリマーをブレンドすることによって、球状ドメインの面心立方格子(FCC)配列を実現する予定であったが、困難を極め未だ実現には至っていない。そこで本研究では、同時進行的に次のテーマでも検討を行った。すなわち、バルク中で球が体心立方格子(BCC)を組むブロック共重合体の表面において、球がFCC配列することを確認し、膜厚を変化させた場合の表面と内部の配列の変化、またそれぞれの膜厚で昇温させた場合の、球の配列が無秩序化する温度が表面と内部で同じか異なるかを明らかにすることを目的とし実験を行った。その結果、内部はBCC配列、表面近傍ではFCCとBCCの両方の配列が混在していることがわかった。一方、250nm程度の薄膜では、FCC配列のみであることもわかった。これらの結果から、膜厚が薄くなるほど、FCC配列をしやすくなると結論した。また、転移温度については、内部と表面でほとんど差は見られなかつた。 ブロック共重合体とホモポリマーをブレンドすることによって、球のFCC配列を実現させることができなかったという結果は、しかしながらそれ自体重要な示唆を与えている。実際、不本意ではあるがこの結果を受けて方針変更し、すでにH20年度、次の対策を講じている。すなわち、マトリックス相を形成するブロック鎖に幅広い鎖長分布を導入してFCC配列を促す実験を実施中である。
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