ブロック共重合体は、ナノメータースケールで相分離して構造を形成する。これはミクロ相分離構造と呼ばれており、球状、棒状、ラメラ状、ジャイロイド状の形態が知られている。球状構造の場合、体心立方格子(bcc)を組むことが知られているが、球の充填個数密度を考えると、bccではなく、面心立方格子(fcc)配列の方が理に叶っている。しかしながら実際は、fcc配列の存在を実験で立証した例は皆無に近い。本研究では、なぜfccの配列が不安定なのか、その理由を鎖状高分子の特徴に立脚して理解し、それを克服してfcc配列の実現を果たすことを目的とした。ブロック共重合体にホモポリマーをブレンドした試料を用いて、規則的なfcc配列を実現させることに成功した。それのみならずfcc格子が自発的に高度に配向することを見いだした(サブテーマ1)。さらに、サブテーマ2では、球状ドメインの一方向の合体によって得られるシリンダー構造が、膜面に対して垂直に配向したようなフィルムが有する異方的な特性(光学特性と力学特性)を明確に示す実験を行ったとともに、異方的光学特性を利用したマイクロメータスケールでの構造解析も行った。また、サブテーマ3では、球状ドメインを形成するブロック共重合体試料の最も有効な用途である熱可塑性エラストマーについて、ウルトラ超小角X線散乱実験を行うことにより、一軸延伸にともなう内部構造の変化をサブミクロンスケールで明らかにした。
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