研究概要 |
両親媒性高分子電解質と両親媒性低分子が溶液中で形成するミセル・超分子の会合体特性と溶液レオロジーとの間の関係を分子論に理解する目的で研究を行った。 (1)ドデシル基で疎水化されたポリアクリル酸ナトリウムと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウムとドデシルメタクリルアミドのランダム共重合体の0.1M NaCl水溶液中は、ある高分子濃度以上で粘度が著しく増加した。光散乱測定と蛍光測定の結果より、希薄水溶液中で両共重合体は複数の高分子鎖が会合して単核の花形ミセルを形成しているが、全ての疎水基が疎水性コア内に取り込まれているわけではなく、ループ鎖上にも疎水基が存在するととが判明した。さらに、動的光散乱測定から得られた速い緩和成分の自己拡散係数は、粘度が急激に増加するのと呼応して急激に減少した。高分子濃度の増加に伴って、花形ミセル間のランダム会合が進むと仮定し、カスケード理論とMartinの式を用いて、高分子濃度の増加に伴う速い緩和成分の自己拡散係数の減少と水溶液粘度の増加を定量的かつ矛盾なく説明できた。 (2)三本の側鎖の内一本のアミド基の結合方向とアルキル基の構造が異なる1-acylamino-3,5-bis(2-ethylhexyl-aminocarbonyl)benzene(AEH_2B)は、三本の対称な側鎖をもつN,N',N"-tris(3,7-dimethyloctyl)benzene-1,3,5-tricarboxamide(DO_3B)と同様、n-decane(C_<10>)中でアミド基間の水素結合で直鎖状超分子ポリマーを形成し、その溶液は単一Maxwell型粘弾性挙動を呈し、さらに超分子ポリマーは長軸に沿った大きな永久電気双極子をもつことを見出した。AEH_2B/C_<10>とDO_3B/C_<10>の動的粘弾性挙動はほとんど一致しており、両者は同じからみ合い点間重合度を有する直鎖状超分子ポリマーを形成すると結論した。他方、AEH_2B超分子ポリマーはDO_3Bに比べて小さな双極子をもつ。両系の超分子ポリマーのからみ合い点間重合度が同じなので、AEH_2B超分子ポリマーがもつからみ合い点間の双極子はDO_3Bのもよりも小さい。一本のアミド基の結合方向が逆で、三重螺旋状水素結合に欠陥を生じ易いことがその原因であろう。
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