研究概要 |
本研究課題では, 各種高分子・超分子溶液の会合体特性とレオロジーとの間の関係を分子論に立脚して理解することを最終的な目的としている。本年度は、以下の3種類の系中で形成される会合体構造を、種々の方法により調査しそれらの特徴的なレオロジー挙動との関係を明らかにする目的で研究を行った。 (1)両親媒性高分子電解質(ランダム共重合体)が水溶液中で形成するミセル 昨年度までに得られた両親媒性ランダム共重合体のミセル構造についてアトミスティックな構造についての知見を得るために、ある両親媒性ランダム共重合体1本鎖の塩水溶液中での全原子分子動力学計算を行った。得られたシミュレーション結果は、これまでの実験結果を説明するモデルとして提案された「最小ループサイズの花形ミセルモデル」とほぼ矛盾のないことが判明した。 (2)水素結合能を有する低分子ゲル化剤が有機溶媒中で形成する長鎖会合体 N, N', N"-tris(3,7-dimethyloctyl)-benzene-1,3,5-tricarboxamide(DO_3B)/n-decane(C_<10>)の超分子ポリマー構造を特徴づけるセグメントサイズ、すなわちDO_3Bが水素結合の欠陥無しに形成するセグメント中に含まれるDO_3Bの平均個数N_sを、非線形粘弾性挙動、線形域の平坦弾性率、および誘電緩和挙動から決定した。最終的に三種類の方法で得られた結果を総合評価すると、DO_3Bの超分子ポリマーはN_s〜30でセグメントを形成し、その中には-から二箇所程度水素結合の欠陥による屈曲点が存在すると結論付けられた。 (3)高分子酸と高分子アミン間で形成される高分子複合体 ポリアクリル酸ナトリウムとポリビニルアミン塩酸塩の中性水溶液を混合して形成されるポリイオンコンプレックスの会合数と構造を、光散乱法により調べた。形成されたコンプレックスは、両高分子の混合比に著しく依存し、カルボキシ基とアンモニウム基が等モルに近づくほど会合数が大きくなり、また混合の仕方にも依存することが判明した。得られた実験結果に基づき、コンプレックス形成機構について考察した。
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