研究課題
液晶エラストマーの物性は、液晶分子の構造やクロスリンキング物質の構造と濃度に大きく依存する。ここでは、サイドチェーン型の液晶エラストマーに絞り、サイドチェーンに2種の液晶分子を混合し、併せてクロスリンキング濃度を変えた場合にどのような構造変化・物性変化を呈するかを調べた。その結果、極性の強い液晶分子の濃度が増すと堅くなり、かっ層構造をとりやすくスメクチック相となりやすい。一方、クロスリンキング濃度にはエラストマーを構成する濃度に下限があり、通常、閾値を越えて濃度が濃くなるとともに堅くなる。その途中の濃度で、メゾゲン分子によるダイマー・モノマー転移に起因した極めて特異な膨潤ダイナミックスを示すのが見いだされた。以下、具体的に述べる。ここではサイドチェーン結合するメゾゲン分子としてシアノ基(-CN)とメトキシ基(-OCH3)をもつメゾゲン分子を準備した。シアノ基を持つメゾゲンはその濃度が増すと、スメクチック相を示し、X線の小角散乱強度から判断すると、シアノ基100%の場合にはスメクチック相はあまり広い領域の層を持つのではなく、サイボタティック・ネマチック相と呼ばれる小さな塊にちぎれたスメクチック層の集合体で、かっ層がダイマー構成となっていると理解される。クロスリンキング濃度依存性は、シアノ基100%では、スメクチック層はダイマー構成される傾向が強いが、クロスリンキング濃度が低いと、層厚が29Åから26Åへと薄くなり、ダイマー・モノレイヤー化と考えられ、これは低いクロスリンキングに伴うネットワークの柔軟性によって実現するものと思われる。このダイマー・モノマー転移の濃度領域では5CBの膨潤は著しく遅く、その時定数はモノマー相やダイマー相の場合の20倍にも及ぶ。これは膨潤が強い揺らぎによって阻害されるためと考えられるが、その詳細については今後の研究による。
すべて 2007
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Molecular Crystals Liquid Crystals Vol. 477
ページ: 127-135
Journal of the Physical Society of Japan Vol.76, No.7
ページ: 073602-1-4