研究概要 |
本年度は,液晶分子とコロイド粒子の混合系における,温度や濃度に依存した相分離の熱平衡状態を調べるための,統計力学的理論を構築し,共存曲線やスピノダル曲線を含んだ相図の計算を行った。コロイド粒子の結晶化の秩序パラメーターと,液晶分子の配向秩序パラメーターと,コロイド粒子の濃度に依存して,等方相-ネマチック相の2相分離,ネマチック相-結晶相の2相分離や,等方相,ネマチック相,結晶相の3相が共存する3重点が存在することが解った。実験的に観測されている相図を定性的に説明できることがわかった。さらに,低温側では,ネマチック相に分散したコロイド粒子が規則的に並んだ,ネマチック結晶相が存在することを,理論的に示した。 等方相から低温側の不安定相に温度クエンチした後の相分離ダイナミクスは,新しいダイナミクスを含んでいる。ここでは,液晶分子の配向揺らぎ,コロイド粒子の結晶化の揺らぎと,濃度揺らぎの,3つの秩序パラメーターの揺らぎによって相分離が進行する。これら3つの揺らぎのうちでどれが,ドライビングフォースとなって相分離が進行するかは,共存曲線の内側のスピノダル曲線を調べることで明らかになった。液晶分子の配向揺らぎが引き起こす相分離(Nu),コロイド粒子の結晶化の揺らぎが引き起こす相分離(Cu),濃度揺らぎが引き起こす相分離(Pu)の3つの領域が存在することを明らかにした。コロイド粒子のサイズ,液晶分子とコロイド粒子間の相互作用に依存して,これら3つの領域がどのように変化するかを理論的に調べた。 これらの相分離ダイナミクスの詳細を調べることが20年度以降の研究計画である。
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