研究概要 |
本年度は液晶とコロイド粒子の混合系の相分離のダイナミクスを調べることであった。ネマチック液晶分子とコロイド粒子の混合系では, 低温側では, 殆ど純粋な液晶分子からなるネマチック相と, コロイド粒子の多い結晶相の2相分離がおこる。一般に, ネマチック相のような秩序の低い相は, 秩序の高い結晶相には溶けにくいのである。相分離を引き起こすメカニズムとして, (1) 濃度揺らぎ(2) 配向揺らぎ(3) 結晶秩序の揺らぎが引き起こす3つのスピノダル領域が存在することを明らかにした。高温側の等方相からこの3つの領域へ温度クエンチしたときのスピノダル分解の様子を, 時間依存Landau-Gunzburg方程式を基礎として数値シミュレーションを行った。コロイドの濃度に依存して, 3つのスピノダル分解の違いを明らかにした. 特にスピノダル分解の初期段階で現れる相分離パターンとして, 実験的に観測されているいくつかの相分離パターンを再現できた。配向揺らぎ引き起こすスピノダル分解では, 相分離の初期段階で, ネマチック小敵から放出されたコロイド粒子がネットワーク状に集まり, コロイド粒子の弱い結晶化によって液晶ドメインが保持された多孔構造ネットワークが現れる時間領域があることを見つけた。結晶揺らぎ引き起こすスピノダル分解では, 共連続構造や, ネマチック液晶場に分散したコロイド結晶小敵などの相分離パターンが出現することが解った。 本研究により, 配向場や結晶場によって誘起される相分離ダイナミクスの違いを明らかに出来たことは意義がある。特に結晶秩序の揺らぎが配向場と連結することで相分離を引き起こす要因になることを明らかにした。これらの結果は, 配向場や結晶場を制御した新しい材料設計において重要である。
|