我々はブロック共重合体のナノ相分離構造により形成される、球状ナノドメイン(場合によりそれ以外の形状)を核として利用し、二酸化炭素をそのドメイン内で発泡させることを狙って研究を行った。ブロック共重合体としては、二酸化炭素との親和性の高いフッ素含有のブロックをその一成分として導入した。二酸化炭素によるプロセスを工夫することにより、フッ素含有のブロックより構成されるナノドメイン内でのみ発泡化が起こり、直径で10-30nm程度のナノ発泡体を形成させることができる。ナノ発泡化は表面積が増大し不安定化する非平衡なプロセスであり、その過程で冷却が必要であった。ブロックコポリマーの超臨界二酸化炭素中での不均一膨潤に起因したナノ多孔体形成は、超臨界二酸化炭素中での骨格ポリマーのガラス転移による構造凍結と深く関係しているが、その測定は高圧ゆえに容易ではない。本研究では、水晶発振の共鳴周波数シフトを利用したガラス転移の検出手法を利用して、ポリスチレン(PS)およびポリメタクリレート(PMMA)のガラス転移温度の測定を行った。PSのガラス転移温度は、これまで測定されたポリスチレンの二酸化炭素中におけるガラス転移温度(30~40℃)と良く一致した。さらに、ポリメチルメタクリレートについて同様の実験を行い、これまでに知られているガラス転移温度・圧力と比較し、これまでガラス転移が認められていなかった低温・高圧領域におけるガラス転移を確認した。これがPMMA系ブロックコポリマーでのナノ多孔化の鍵となっている。
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