研究概要 |
1.液晶のコレステリックブルー相の秩序構造,および電場応答に関して,連続体シミュレーションによる研究を行い,温度と液晶のキラリティの強さに関する相図の予備的な計算を行なった.また電場によって,液晶中の位相欠陥の構造,および秩序構造の単位格子の大きさが,構造の種類,電場の強さ,方向に応じて様々に変化することを見出した.典型的な液晶の3次元秩序構造の1つを直接数値計算によって調べることができるようになったという点で,重要な成果である. 2.表面の凹凸に由来する液晶のアンカリングの既存の理論に関する問題点を明らかにし,アンカリングのエネルギーの数値計算により,修正を施した理論の正当性を確かめた.液晶の3次元シミュレーションと密接な関連のある成果である.また,アンカリングという液晶の基本的な性質に関する理論の見直しという点で重要であるのみならず,表面のパターニングによるアンカリングの制御について,新たな視点を与えるものである. 3.スメクチックQ(SmQ)液晶相構造モデルの熱力学的安定性と分子キラリティとの関連について,分子動力学シミュレーションによる解明を試みた.分子キラリティの異なる光学異性体およびそのラセミ体それぞれの構成分子を用いた系のシミュレーションを行った結果,SmQ相を示す光学異性体のみで構造の特徴がが維持され,SmQ相を示さないことが報告されている上記その他の系では維持されず,現実系と対応した構造安定性と分子キラリティとの関係が得られた. 4.キラルスメクチックC液晶の2次元薄膜中に円形の粒子が存在する場合の,液晶配向と欠陥の構造について,解析的な考察を行なった.配向,欠陥構造は,キラリティの強さのみならず,系の外側の境界条件にも依存することを明らかにした.
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