研究概要 |
本研究課題では、材料のナノ構造を詳細かつ定量的に解析する技術を検討・発展させ、薄膜試料に応用して薄膜の高品質化に資することを目的とした. (1) 走査型電子顕微鏡(SEM)による転位の観察。 微細構造は多くの場合透過電子顕微鏡(TEM)による解析が行われているが、試料作製の困難さや観察領域の制限などの問題も多い. そこで、SEMでいかにして転位などの評価・解析が行えるかを検討した。その結果、角度選択後方散乱電子検出器(AsB)を用いることにより、半導体薄膜内の貫通転位を検知することに成功した。また、加速電圧やワーク長に伴う像コントラストの変化も詳細に調査した. とくに、試料の僅かな傾斜により像コントラスが変化することが見出し、像コントラストが回折の効果であることを確認した. (2) 電子線後方散乱回折(EBSD)の応用。 EBSDパターンを詳細に解析することにより、薄膜試料の格子歪を広範囲に測定する技術を試行した。その結果、AlGaN/GaN試料において結晶軸傾斜が最大で0.5°、歪は約1%に達することを確認できた。測定の自動化により2次元マップ表示も可能となり、微細組織との対応させることができ、薄膜成長過程の解析に重要な情報となる。 (3) AIGaN, GaN薄膜成長過程と組織制御 ナノウィンドウマスクによる転位消滅過程を詳細に解析した. その結果、マスクが転位を集める効果の大きさは、実際のマスク幅より約500nm長い有効幅で表されることを明らかにした。すなわち、マスクウィンドウを500nmとするのが最も効率の良いマスク設計となる。さらに、マスク寸法と貫通転位の減少率を統計学的な考察により、初期転位密度とマスク寸法で表す式を提案した このほか、AlGaN/GaN, AlN/周期溝テンプレートなど多くの薄膜試料の解析を行い、成長過程や欠陥の生成・消滅機構を解析した。
|