研究概要 |
我々は安価な装置を用いて実験室レベルで簡単にカーボンナノチューブ(CNT)及び金属内包カーボンナノカプセルの合成を行うことが出来る新規な合成方法を開発した。この方法では電気炉の代わりに,温度制御が出来るように改造した家庭用電子レンジ(象印ES-HA196 600W)と,電子レンジを用いて僅か10分で炉内を900℃まで昇温することが出来るアートボックス^<TM>と呼ばれる市販の磁性発熱箱を不活性ガスで満たせる様に改造した物を組み合わせた安価な装置を用いた。今回,この安価な加熱装置を用いて2通りの方法を用いてCNT合成を行ったところ合成に成功した。まず,1つ目の方法は炭素源となるステアリン酸を入れたるっぼが下に,触媒となるNi金属を蒸着させたるつぼが上になるようにるつぼを組み合わせた物を窒素ガス気流下で蒸し焼きにするというCCVD法と同様の原理を用いた方法(混合物法)である。そして,もう1つの方法は,原料となるニッケルステアレート金属錯体を入れたるつぼを下に,フダとなるるつぼが上になるように組み合わせた物を窒素ガス気流下で蒸し焼きにするという方法(金属錯体法)である。我々はこの異なる2通りの簡易な方法を用いてCNTを低コストかつ短時間で合成することに成功した。ここで大変興味深いことに混合物法では金属を含まないCNTを合成することができ,一方,金属錯体法では金属を内包したCNTやカーボンナノカプセルが合成することが出来ることが明らかになった。金属を含まないCNTは酸処理後磁性を示さないが,金属を内包したCNTやカーボンナノカプセルは酸処理後も磁性を示す。2つの方法を使い分けることによって,これらを選択的に作り分けることが出来ることがわかった。また,我々が開発した方法を用いれば簡単な操作と安価な装置でCNTを低コストかつ短時間で合成できる。
|