研究概要 |
マイクロ波利用化学反応の機構解明を目的として,以下の2つの項目を検討し成果を得た。第1に,酵素反応へのマイクロ波効果を検討した。生体触媒である酵素や微生物を有機合成反応に利用するメリットは,通常の化学反応では得難い高い選択性にある。しかしながら,有機溶媒中で酵素を用いた場合,その多くは触媒活性が不安定化したり,反応時間が長くなるなどのデメリットがある。そこで,それらの問題を解決するために,マイクロ波を付加的に利用することを検討している。この研究では,固定化酵素であるリパーゼ(Novozym435)をエステル交換反応に利用した際に,マイクロ波照射の効果を検討した。結果として,充分な反応促進効果が見られた。 この酵素反応については,詳細な速度論的な解析を行なった。さらに,酵素反応の特徴である立体特異性について,マイクロ波効果を明らかにした。 第2に,マイクロ波促進ペプチド合成におけるアミノ酸誘導体の双極子モーメントと反応収率の相関性を検討した。種々の有機合成反応で,従来の加熱方法に代わりマイクロ波照射が非常に効果的であることが示されてきた。反応速度の増大,収率や選択性の向上など様々なマイクロ波効果として現れているが,その詳細なメカニズムは明らかにされていない。我々はこれまでに,ペプチド合成に関わる保護基導入反応や縮合反応にマイクロ波を照射しその有用性を示してきたが,種々のアミノ酸残基に対して,基質の双極子モーメントと反応収率が大きく関係することを見出した。
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