本研究はフレーバー物理学の中の一つの方向性である中性K中間子の稀崩壊過程の分岐比測定に関する課題である。中性K中間子を飛来させるビームの中には大量の中性子が含まれているが、ビーム領域周辺にも無視できない量の中性子が染み出てきており(ハロー中性子)、これらが検出器と散乱することで信号事象とよく似た現象を発生させる。次世代実験でこの問題を克服するためには、飛来している実際のハロー中性子量を実験中にリアルタイムで測定することが重要だと考えられる。実験の要請より、この検出器は光子検出器としての機能も同時に持たなければならない。光子と中性子の数量やエネルギーを測定でき、しかも両者の識別が可能であるような、光子中性子両用検出器の開発が不可欠である。 本研究では純ヨウ化セシウム結晶シンチレータを複数組み合わせた複合型検出器の開発を具体的目標とした。結晶の種類は発光量やコストなどの要因を考え合わせて決定した。本課題では以下のことをおこなった。 (1)検出器の諸パラメータの最適化 検出器のサイズや配置などをシミュレーションによって最適化する。これにより中性子測定機能の付加のみならず、バックグラウンド事象そのものを減少できることを確認した。 (2)読み出し方法の検討と性能評価 限られた設置スペースでヨウ化セシウム結晶の光を読み出す方法として波長変換ファイバーの使用を考え、試験機によって性能を評価した。特に波長変換材の異なる数種類のファイバーを検討・測定・評価し、ヨウ化セシウム結晶の発光波長域や光検出器の感度領域に適合したものを選択することで、十分な性能が得られることを確認した。
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