研究概要 |
膜蛋白質を安定かつ効率的に抽出する新規な界面活性化剤を合成する事,膜蛋白質の安定性を高める試薬を開発する事の2点によって,膜蛋白質の構造解析を支援する事を本研究の主な目的とした. (1)新規な界面活性化剤の合成:膜蛋白質を安定かつ効率的に抽出できると期待される界面活性化剤を合成した.精製は困難であったが,純品を得る事に成功した. (2)NDSBによる蛋白質のNMR測定の改善:NDSBが不安定な蛋白質のNMR測定に有用である事を示すために,酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)のNMR測定に応用した.NDSBはaFGFの熱安定性を濃度依存的に高めた.NDSBによるNMRシグナルのシフトは有意ではあるが,スペクトル解析に支障になる程は大きくなかった.NDSBは二次構造(αヘリックスとβストランド)とループとの接合部に影響を与えている事がわかった.このような接合部は多くの蛋白質に存在するので,NDSBは種々の蛋白質の安定化に利用できると期待される.また相互作用のみかけの解離定数は0.05〜2Mの広い範囲にわたっていた.この値は通常の酵素/基質のミカエリス定数より大きい(弱い)ので,NDSBは酵素/基質相互作用などに影響を及ぼさないと考えられる. (3)m3ムスカリン性レセプター部分ペプチドによるGqの特異的活性化:Gqは心肥大やガンなどに関与する膜蛋白質であるが,Gqを特異的に活性化できる低分子化合物が存在しない事などから,その研究は他のG蛋白質に比べて遅れている.m3ムスカリン性アセチルコリンレセプターはGqを活性化するがGiは活性化しないので,その部分ペプチドはGqを特異的に活性化できると期待される.実際にm3レセプターの細胞内第三ループペプチドはGqを特異的に活性化した.このペプチドはGqの解析に大いに役立つと期待される.
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