研究概要 |
F-BAR/EFCドメインを持つチロシンキナーセサブファミリー、FesおよびFerの脂質結合能の詳細な解析を行った。まず、Fes、FerのF-BAR/EFCドメインを含むアミノ末端側445残基はウシ脳由来リン脂質から成るリポソームに強く結合した。さらに、各種リン脂質に対する結合特異性を調べた結果、この領域はPAおよびPI(3,4,5)P3に最も強く結合することが明らかとなった。一方で、F-BAR/EFCドメイン単独(アミノ末端側300残基)では非常に低い脂質結合能しか示さなかった。このことはF-BAR/EFCドメインによる膜変形において、隣接する約150残基からなる領域が協調的に作用していることを示唆している。特に、リン脂質に対する特異性(PA、PIP3)を決定しているのはこの150残基であることも明らかになった。またF-BAR/EFCドメインは直径約1-10・mのLMV(large multilamellarvesicle)により強く結合したのに対し、隣接する150残基領域は50-200nmのSUV(smallunilamellar vesicle)に高い親和性を示した。このことはFes、Ferのアミノ末端領域に二種類の異なる膜の曲率センサーが存在することを示唆している。 現在、PAとの結合によってFes、Ferのチロシンキナーゼ活性が制御される可能性を検討するため、in vitro kinase assayの実験系を立ち上げている。また、PLD→PA情報伝達系がlamellipodia形成に関与する可能性、およびその過程へのFes、Ferの関与を明らかにするべく、RNA干渉実験を行っている。
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