研究概要 |
金属イオン輸送体の構造解析に関しては、MgtE全長の結晶化・セレノメチオニン置換体タンパク質を用いた多波長異常分散法による位相決定に成功し、最終的に3.5Å分解能での構造決定を行った。さらに、マグネシウムイオンあり・なし両条件下でのMgtE細胞質ドメインの構造決定にも成功した。その結果,Mg^2+欠乏条件下の細胞質ドメインの構造ではMg^<2+>過剰条件下と比較し、大きな構造変化がみられた。この構造変化がMgtEの膜貫通ドメインの構造変化を誘起し、イオン透過孔を開閉してMg^<2+>透過を制御すると推測される。したがって、MgtEの細胞質ドメインがセンサーとして生体内のマグネシウムの濃度を感知することで、Mg^<2+>が過剰な時には輸送体によるMg^<2+>取り込みを阻害し、欠乏している場合には輸送体によるMg^<2+>が取り込みを促進させるという、Mg^<2+>バランス維持のメカニズムが示唆された(Nature, 2007)。ペプチド膜透過装置に関しては、SecYEのセレノメチオニン置換体結晶を用いた多波長異常分散法により位相決定に成功し、最終的に3.2Å分解能での構造決定を行った(論文準備中)。TSecDFについては,ペリプラズム領域のみの高分解能構造を、結晶構造解析・NMR法を用いて決定した。今後全長の電子密度マップにこれらの構造を当てはめ、新規膜タンパク質TSecDFの分子モデルを決定する。
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