Na^+/H^+交換輸送体NHE1はNa^+濃度勾配をエネルギーとしてH^+を排出することで細胞内pHなどの調節を行う。増殖因子や発ガン因子による刺激は最終的にNHE1を活性化して細胞をアルカリ化させる。この活性化にはNHE1のC末端細胞質ドメインにカルシニューリンB類似蛋白質CHPが結合することが必須であり、CHPは細胞内pHに依存した活性化制御を行うpHセンサーとして機能することが示唆されている。そこで本研究では輸送活性のpH依存性が異常なCHP1変異体を用い、そのpH依存性をNMRと分子動力学計算により解析することでpHセンシング部位の同定を目指した。また、活性型となる酸性条件下での構造解析を試み、活性型と不活性型の構造の違いからpHセンシング部位とpHに依存した活性制御メカニズムの解明を目指した。 平成19年度はCHP1/NHE1複合体のpHタイトレーション実験を行い、^1H-^<15>N HSQCスペクトルによる主鎖NHグループの見かけのpKaを決定した。化学シフト変化が大きい部位のアミノ酸を同定し、pHセンシングに関わるアミノ酸を推定した。活性の変曲点がpH6.5近傍であることと合わせ、ヒスチジン側鎖のpH依存性については主鎖の解析とは独立に特に詳しく検討した。また異常なpH依存性を示す他の側鎖がないか確認実験を行った。輸送活性がアルカリ性側にシフトするCHP1/NHE1変異体について大量発現系を確立するため、分解性のNHE1ペプチドを効率よく発現精製可能な系を立ち上げた。
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