研究概要 |
本年度は, 以下の研究を行った. 1) イオンチャネルタンパク質KcsAのミセル再構成系の確立 : 大腸菌により大量発現させたKcsAの完全長タンパク質をSDSミセルに4量体として再構成した状態でNMR測定可能な試料の大量調製法を確立した. 2) イオンチャネルタンパク質の分子形態変化技術を目指した測定技術の確立 : SDSミセルにより再構成されたKcsAの分子量は約100kDaになるが, この状態での分子形態変化観測を行うために, われわれが開発してきたDIORITE法の適用が必要である. DIORITE法で解析の前提となる, タンパク質の分子配向状態を実現するために, アクリルアミドゲル中で最適な分子配向を実現する条件の検討と, 構造解析法の検討が必要であった. このために, MBP(40kDa)をモデル系として, MBPのリガンド結合に伴う分子形態変化を観測する技術を確立することを目指した. この結果, MBPを磁場に対して適切に分子配向させる試料調製条件を確立し, 実際にDIORITE法を用いたリガンド依存的なMBPの分子形態変化の観測に成功した. タンパク質の分子配向依存的に変化するTROSYシグナル変化のみから, MBP中のドメイン間相対配向の変化を定量的に解析することが可能となった. この研究の中で確立した技術により, KcsAを対象とした分子形態変化観測の準備が完了した. 3) KcsAの全長再構成系における主鎖シグナルの帰属 : 2H/15N/13Cで標識したKcsAのSDSミセル再構成試料を調製し, Trosy 3重共鳴スペクトルの測定を行った. 主鎖のシグナル解析・DIORITE法による分子形態変化観測は, 今後順次進めてゆく.
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