研究概要 |
(i)腸内連鎖球菌V-ATPaseのNtpKリングの22Na^+結合性(約40μMのKd値)とV-ATPase複合体の22Na^+結合性(約30μMのKd値)は、イオンに対する選択性を含めてほぼ同じであり、NtpKリングの性質は本酵素の性質を反映すると結論された。Na^+共役型F-ATP合成酵素はNa^+,Li^+を輸送するだけではなく、これらのイオン非存在下ではH^+輸送と共役することが知られている。本酵素ではこれまでH+輸送を観察することができていないが、NtpKリングの22Na^+結合活性に対するpHの影響を調べることから、H^+の作用を検討した。その結果22Na^+の結合は拮抗的にpHの影響を受けること、H^+によるKi値はpH 5.5で約4μMと算出された。Na^+共役型F-ATP合成酵素と同様に、本酵素NtpKリングのイオン結合部位にNa^+, Li^+と同様にH^+も結合すると推定された。 (ii)コムギ胚芽を使用した無細胞タンパク質合成系でV-ATPase全サブユニットの合成を試みて、7種類の親水性サブユニットA,B,C,D,E,F,Gについて合成効率に差があるものの成功した。A_3B_3DからなるV_1部分のコア複合体の形成を、無細胞タンパク質合成系で合成した。ニッケル親和性、陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製が可能であることがわかった。ATP加水分解活性はnativeな酵素に較べて著しく低く、今後酵素活性を保持した複合体の合成条件の検討する必要があると考えられた。
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