腸球菌ナトリウム輸送性V-ATPaseによるイオン輸送は、イオン結合性回転ロータリングリングKとイオンチャネルIとの相互作用により行われる。イオン輸送メカニズムについて、Na+の交換反応の解析を通じて考察した。 精製NtpKリングに結合した^<22>Na^+に対するNa^+による交換反応を調べたところ、交換反応は一相性であり、かつ速度はKexchange=0.06min^<-1>の値を示した。この値は、V_0V_1ATPアーゼのNtpKリングのNa^+結合の交換反応が示す三相性 (Kexchange=>1.7min^<-1> ; Kexchange=0.16min^<-1> ; Kexchange=0.05min^<-1>) の値、V_0V_1ATPアーゼにATPを添加した場合に観察される二相性の値(Kexchange=>4.8min^<-1> ; Kexchange=0.05min^<-1>) と大きく異なっていた。V-ATPアーゼ・F-ATPアーゼ間で共通するイオン輸送メカニズムについては、one channel modelかtwo channel modelかが議論になっており、本酵素V-ATPアーゼのメカニズムとしてNa^+あるいはLi^+が直接外液から回転リングに作用するone channel modelの可能性が推定されていた。この結果は、他のATPアーゼの知見を考え合わせて、回転に伴って逐次イオンが輸送されるtwo channel modelを協力に支持するものである。
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