本研究で対象とする膜に関わる蛋白質は、酵母のmRNAの核外輸送ができない温度感受性株の一つの原因蛋白質として見出されたPtr7と炎症性サイトカイン受容体ファミリーからの情報伝達に関わるTRAF6/TIFA複合体であったが、Ptr7のホモログの構造解析や機能解析が報告されたので、新たにPtr7と同様にmRNAの核外輸送に関わると予想されるが、機能未知である1回貫通型膜蛋白質Ptr10のヒトホモログの膜外C末ドメインhPtr10-Cを対象に加えた。本研究では、hPtr10-CのX線結晶構造解析を行い、立体構造から機能を推定し、核膜や小胞体膜に存在するPtr10の働きを解明すること、Ptr7については酵母における機能解明とその立体構造基盤の解明、炎症性サイトカインからの情報伝達機構について、立体構造に基づく機能の解明と抗炎症剤の設計、以上を目的とする。 hPtr10-Cについては、昨年度発現系と大量産生系の確立を行い、結晶化を行ったところ、X線回折実験可能な結晶を得ることができた。本蛋白質は長期の保存が困難であるので、結晶化を行う度にhPtr10-Cを精製し、X線回折実験可能な結晶が得られると凍結保存しているので、次回の放射光実験で、高分解能データや多(単)波長異常分散法(MAD/SAD法)による解析のためのデータを収集予定である。 酵母Ptr7についてはヒトホモログで報告されたsiRNAのリン酸化活性を調べたが、見出せていない。siRNAのリン酸化活性が見つかれば、Ptr7-RNA複合体の結晶化を試みる予定である。 TRAF6/TIFAについては、TRAF6の発現系構築後、精製を試みたが可溶化TRAF6を得るのは困難であることが分かったので、確実に可溶化するTRAF6のC末ドメインの調製を行っている。今後すでに確立させた方法で精製しTIFAとの複合体の結晶化を行う。
|