研究概要 |
(1)PFOタンパク質 Perfringolysin Oはコレステロールに富む膜領域に選択的に結合する性質を持つ。無毒化誘導体を用いたT細胞脂質ラフトの解析から,加齢に伴うその量的/質的変化を示唆する結果を得た。脂質ラフトはT細胞活性化の初期反応の「場」と考えられることから,ラフトに局在するシグナル伝達関連分子群を解析したところ,T細胞活性化を「負」に制御する分子群の加齢変化を見出した。T細胞の活性化能は加齢に伴い著しく低下することが知られているが,上記の結果は,脂質ラフトの量的/質的変化がその原因の一つであることを示唆するものと考えられる。 PFOのコレステロール結合ドメインであるD4は凝集しやすいが,凝集防止剤を添加する等の工夫を行うことで,共鳴線の帰属をある程度まで進める事ができた。 (2)核酸性イオンチャネル リポソームに4重鎖核酸を組み込み,4重鎖核酸にチャネル活性があるのかを検証した。リポソーム内に金属イオンと蛍光性のpH指示薬を封入し,これをリポソーム内に比べ金属イオン濃度とpHが低い水溶液に移した。ここにプロトンイオノフォアを添加する事で,リポソームからの4重鎖核酸を介した金属イオンの流出とそれとカップルしたリポソーム内へのプロトンイオノフォアを介したプロトンの流入が生じるのかを,蛍光性pH指示薬の蛍光強度の変化を蛍光分光器でモニターする事によって,検証した。リボソームに4重鎖核酸を組み込んだ時のみ,プロトンイオノフォアの添加に添うリポソーム内の蛍光強度の減少(pHの低下)が見られた。これは金属イオンの流出とそれにカップルしたプロトンの流入が生じている事を示しており,4重鎖核酸がチャネル活性を有する事が示唆された。目下コントロール実験や他の手法による検証も併せて行い,この事のさらなる検証を進めている。
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