研究課題
NMRやX線結晶構造解析と羅分析を組み合わせることで、タンパク質複合体の構造機能解析を加速することを目指し、塩濃度により複合体の形成が影響を受ける系について構造解析した。バクテリアにおいてトリプトファンの生合成を制御するタンパク質TRAP(trp RNA binding attenuamnprotem)とこれに特異的に結合しTRAPの活性を制御するタンパク質Anti-TRAP(AT)の複合体の構造解析をESI-MSで行った。その結果、(1)TRAP(8.4kDa)は塩濃度に依存せずに主に11量体(一部12量体)で存在すること、(2)Ar(5.7kDa)はpH6.8ではモノマー当たり1つのZn^<2+>を抱えて3量体×4の12量体を形成すること、(3)11量体TRAPはRNAと1 : 1で結合することという結晶構造と整合性のある結果が得られた。ところがTRAP-AT複合体では、結晶構造は12量体TRAP+6×AT3量体が示されているのに対し、500mMという高い酢酸アンモニウム濃度でのESI-MSでは、溶液においては異なるストイキオメトリーをもつ少なくとも4種類のTRAP-AT複合体(11量体TRAP+(3〜5)×AT3量体および12量体TRAP+6×AT3量体)が存在することが示された。このことは、生体内ではさまざまなストイキオメトリーをもつヘテロな状態であっても、X線結晶構造解析の結晶化の過程では対象性がよい構造の複合体のみが選別・結晶化されてしまうのに対し、ESI-MSでは溶液における複合体に関する情報を得ることができ、構造研究においてESI-MSの利用はきわめて有用であることが明らかにされた(Tameらとの共同研究)。再構成したヒストンダイマー、テトラマーについて、形成される多量体は塩濃度依存的に量比が変わることをESI-MSで解析した。
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