研究概要 |
分子動力学シミュレーションを用いて,膜インタフェイスに関わるタンパク質を計算機中で運動させることによって,それらタンパク質の機能発現の動的過程を明らかにすることを目的として以下の研究を行った。 (1)Sensory Rhodopsin II/Transducer複合体のシミュレーション:この複合体の結晶構造は,膜結合部直下から欠失している。またTransducerについては,細胞質内のHAMPドメインの構造が別の種(A.fulugidus)で,NMRによって解かれている。それら二つをあわせたモデルを構築するため,まず,TransducerのNMR構造から,N.PharaonisのHAMPドメインのモデルを構築し,そのモデルの安定性を分子動力学計算によって確認した。さらに,そのモデルを複合体に接続したモデルを構築した。さらに,そのモデルの安定性を予備的な分子動力学計算で示すことに成功した。 (2)IP_3受容体のIP_3結合ドメインの構造変化シミュレーション:IP_3結合型であるIP_3結合ドメイン結晶構造の欠失部分のモデリングを行い,初期構造を構築し,そこからIP_3を取り除いた構造から数度にわたる長時間シミュレーションによってIP_3非結合型の構造予測を行った。その結果,二つのドメイン境界にある疎水領域の安定性,また数多くの極性残基間の水素結合により,IP_3結合型の予想よりも近傍の構造に止まることが示された。
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