細胞膜に存在する上皮成長因子受容体(EGFR)の機能発現に重要な会合状態を精密計測するため、分子サイズの空間精度を有する超高解像顕微鏡技術であるPhoto-Activated Localization Microscopy(PALM)の改良・応用を計った。光変換型の新規蛍光蛋白質mKikGRをEGFRと融合してCHO細胞に発現させPALMを行ったところ、固定した細胞膜上においてEGFR多量体を約25nmの位置精度で観察することができた。従来顕微鏡法ではひとつひとつを観ることができなかった密集している多量体についても、各々を分解してイメージングすることが可能となった。多量体に含まれる色素分子数をその点滅から直接数ることにより、新しい会合体計測法の確立を試みている。 また、従来手法に画像処理技術を組み合わせることで分解能の向上を試みた。全反射照明を用いた1分子イメージングによりCHO細胞膜上のEGFR-EGFP分子を観察、取得した画像に2次元デコンボリューション処理を施した結果、分解能は170nmに向上させることができた。デコンボリューション処理によって定量性の改善も見られ、より精確に多量体分布を計算することが可能となった。こうして得られた分布から、EGF刺激がない状況においても階層的な多量体構造が形成されていることを確認すると同時に、多量体分布がEGFR発現量に依存することや、各多量体間における親和性の傾向といった知見が得られた。会合体分布のモデル解析から、多種のメカニズムが会合体形成に働いでいることが示唆された。これらの実体を検討するため、会合体形成に細胞骨格やコレステロールがどのような影響を及ぼすかについても検討を行った。アクチン骨格破壊およびコレステロール除去の両方で、会合体分布が変化することが明らかになった。
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