1.ビンキュリンとαカテニンとの張力依存的な結合の分子機構の解析:αカテニン(1-906アミノ酸)のビンキュリン結合部位が325-360であること、張力がないときにビンキュリンとの結合を阻害する領域が510-633にあることを試験管内の結合実験から明らかにした。 2.αカテニンが張力によって構造変化を起こすことを示唆する証拠:αカテニンのN末、C末に蛍光エネルギー共鳴移動(FRET)を起こしうる2種類の蛍光タンパク質を融合し、構造の変化をFRET効率の変化として検出することを試みたが、意味のある変化は見られなかった。これは効率の高いFRET分子が作成できなかったためか、あるいは細胞内でαカテニンが2量体を作るため隣接する分子の蛍光タンパク質が悪い影響を及ぼしているためであろうと考えられた。一方、αカテニンのターンオーバーをFRAP法によって測定すると、張力を受けているときに明瞭にターンオーバーが遅くなり、αカテニンに何らかの変化が起きていることを示唆した。さらに、αカテニンに対する特定のモノクロナル抗体が、細胞内で張力を受けている、AJにおけるαカテニンを特異的に認識することを見いだした。さらにこの抗体の認識するエピトープは420-430であることを決定した。試験管内においてこの抗体は、そのエピトープを含もののビンキュリンとの結合には阻害がかかっているαカテニン273-697には結合できなかった。このような性質を持つ抗体の存在は、αカテニンが張力をうけて構造変化を起こす(エピトープが露出する)ことを強く示唆するものである。
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