研究課題
神経軸索のガイダンスや神経細胞の持続的な生存は、神経支配の標的組織から局所的に分泌される神経栄養因子によって制御されている。神経栄養因子のひとつNGFの受容体TrkAは、リガンドとの結合に伴ってその細胞質ドメインが大きく構造変化する。この構造変化は、細胞質ドメインのチロシンリン酸化とともに起こることが知られている。構造ひずみによって蛍光強度が変化する蛍光タンパク質をTrkA細胞質ドメインの適当な部位に挿入することにより、この受容体の活性化を生きた細胞内で可視化し、局所的なNGF投与に対する受容体の活性化や神経細胞の応答を明らかにすることがこの研究の目的である。本年度は細胞質ドメインの途中に蛍光タンパク質を挿入する試みをおこなったが、機能を保持した状態で受容体を発現することは出来なかった。最近、タンパク質のC末端に円順列変異タンパク質をつなげるだけで、そのN末端側のタンパク質の構造変化を検出できることが報告された(Nausch et al., 2008)。この方法で作成した5種類の円順列変異をもつ蛍光タンパク質VenusをC末端にもつTrkA-cpVenusはHeLa細胞で正常に膜に発現することが確認できた。現在これらの変異受容体をスタートとして、神経成長因子の投与にともない、蛍光タンパク質の蛍光強度やそのスペクトルが変化する変異体を探索している。また、HeLa細胞は通常TrkA受容体を持たないために、この機能をアッセイするためには必ずしも最適な細胞ではない。この変異TrkA受容体を、神経分化や軸索伸長の研究モデルとされているPC12細胞に発現させて、その機能チェックをおこなっている。
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Nature methods 5
ページ: 339-345
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104
ページ: 5842-5847