生体内ではアクチン線維は種々のアクチン結合蛋白質と高次構造を形成している。この高次構造とミオシンとの相互作用を探る事を目的とし、種々のアクチン結合蛋白質を結合させたアクチンレール上でのミオシン滑り運動解析を行った。従来のin vitro motilityアッセイ法に(1)非標識アクチン線維を混合し、(2)全反射蛍光顕微鏡を利用する事でバックグラウンドを大幅に改善し、高濃度アクチン線維/アクチン結合蛋白質下でアクチンミオシン相互作用を直接観察できるよう工夫した。 筋織維蛋白質であるトロポミオシンを飽合させた場合、ミオシン上の滑り速度は裸のアクチン上の1.3倍に上昇、また同じく筋繊維蛋白質カルデスモンを飽和結合させた場合は1/3の速度となった。ミオシンと相互作用するアクチン線維の数に差はみられなかったことから、トロポミオシン、カルデスモンはミオシンとアクチンとの結合に影響を与えるのではなく、滑り運動速度そのものに影響を与える可能性が示唆される。一方、アクチン脱重合促進因子のコフィリン、脳特異的アクチン結合蛋白質ドレブリンを飽和結合したアクチン線維においては、ミオシンに結合るアクチン線維の数が大幅に減少したことから、コフィリンとドレブリンはアクチンとミオシンとの結合を阻害する可能性が示唆される。ちなみに、この観察条件と同一条件下において、トロポミオシンはアクチン活性化ミオシシATPase活性を促進、カルデスモン、コフィリン、ドレブリンはともに減衰させたが、上記理由により減衰の中身は異なると考えられる。 以上、裸のアクチンとミオシンとの相互作用様式と、実際の生体で起っているであろうアクチンとミオシンとの相互作用様式は、かなり異なっている事が示唆される。今後、より生体に近いアクチンレールを作成し、同様の解析を行って行きたい。
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