細胞内でタンパク質のフォールディンダを助けるシャペロニンGroELは細胞の生育に必須の生体ナノマシンである。GroELは機能単位である「かご」状の7量体リングが背中合わせに2つ結合したダブルリング構造を取る。この2つのリングがATP加水分解にしたがって、交互に機能しながらはたらくというモデルが定着しているが、その詳細な分子機構にはまだ不明点も多い。 そのような背景の下、申請者らは、ダブルリングGroELと双頭キネシン間に存在する構造や作用機構における類似点に着目して、GroELのダブルリング構造の意味を理解するためのいくつかの実験を行っている。これまでにGroELのダブルリングの意味を探るための変異体解析などを行ってきた。sらに19年度に行った研究の結果、GroELのダブルリングの両方に変性タンパク質が結合したままでサイクルが回ることが明らかとなった。この実験結果に加えて、GroELのサイクル途上にて補助因子のGroESが2つのGroELリングに結合可能であるということも見出した。これらは従来考えられてきたシャペロニンGroELの作用機構モデルと異なるものである。そこで、ここで得られた結果を基に、これまでに信じられているシャペロニンGroELの反応サイクルをさらに発展させた「ダブルストローク」機構を提案した。このモデルにおけるGroELのプロセッシビティー機構についても考察を加えた。
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