研究課題
本研究では、暗視野照明法という古典的な顕微鏡照明方法であるが、アキシコンレンズを組み込んだ新しい光学系を開発し、光源として用いるレーザー光の光をほとんど損失なく観察試料に集光させることができる装置を実用化した。この工夫により、レーザー光を効率よくコンデンサレンズへと導くことが可能となり、同時に、対物レンズの開口数よりも高い開口数で観察試料を照明できるために、暗視野照明条件も達成できる。その結果、従来の暗視野照明法よりも1000倍も高い像輝度で試料となるマイクロビーズを観察でき、マイクロビーズ試料の位置変位の計測において画期的な精度向上をもたらすことができた。従来手法では、光学系や計測システムの制限により、1kHz/0.1nm、あるいは、10kHz/1nmという実質的な精度の限界があった。本研究手法で開発した技術では、暗視野照明法であるために背景光の混入を非常に少なくでき、その光が発生するショットノイズが無視できる程度に小さくできる利点である。その結果、計測技術上S/N比(信号/雑音比)を大きく向上させることが可能となった。0.35ミクロンのポリスチレン製マイクロビーズの位置変位を0.1nm/10kHzの高い精度で変位計測できることがわかった。応用実験として、ウニ精子微小管の数100Hzの高速微小振動を高い時間分解能で計測し、振動周期にゆらぎがあること、振動ピークに峰分かれがあることなどが、明らかになった。さらに、金コロイドのような金属粒子では、マイクロビーズとは異なる散乱強度分布となり、観察像の輝度をさらに数100倍も上がられるために、上で述べた位置計測精度をさらに20〜30倍向上でき、数pmまで将来的には計測精度を上げることができると予想している。生物物理学の分野、特に分子の動態を探る研究に広く応用できるものと期待している。
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ページ: 10106312839914
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