申請者が開発したPRODAN-UV法による阻害により、鞭毛屈曲運動がどのように阻害さえるかを詳しく解析した。その結果、ウニや魚類精子鞭毛など、比較的単純な9+2構造を持つものでもマウス精子など複雑な修飾構造を持つ鞭毛でも同様に阻害されることが分かった。また、阻害により、まず屈曲の伝播に障害が現れ定常波のような屈曲となり、やがて停止することから、屈曲の伝播が単なる屈曲形成より高次な仕組みをもっていることが分かった。また、カバーグラスに超近接して、ガラス表面に平行な面で二次元の屈曲運動をしているウニ精子の細胞膜除去-再活性化鞭毛に、エバネッセント照明によるPRODAN-UV法を適用し、鞭毛軸糸のダブレット微小管の束を単位とした阻害が可能かを試みた。そして従来のレーザー光源でなく水銀ランプ光源によっても運動阻害が生じ屈曲波が乱れ、最終的に運動停止を起こさせることに成功した。そしてこの場合においては、まず屈曲面が乱れ3次元的になることが観察された。しかし定量的解析のためにウニ鞭毛波全体の明瞭な記録をとることとエバネッセント照明とを両立させることが困難であることが分かり、今後の課題として残された。また細胞膜除去鞭毛を酵素処理して微小管を滑り出させる実験においても、PRODAN-UV法によって阻害される。滑り出しのパターンは鞭毛運動制御と密接に関係すると考えられるが、酵素処理の違いなどの詳細を解析するための記録方法についても、暗視野照明とは両立が難しく、次年度の検討課題として残された。
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