細胞内膜系におけるタンパク質の1分子レベルでの動きを解析するために2008年に発表した論文で用いたシステムよりも、時間空間分解能を一桁以上高めた系を構築し、これまでの結果の再検討を行った。この系では、単純拡散するタンパク質においても、トラッキングを行うのにある程度十分な生存時間が得られるので、先に用いたような生存時間のfast time passage analysisに加えて、軌跡を直接解析することができる。輝点のjump distance analysisを用いて拡散の成分分析を行うと、最小の蛍光タンパク質の場合には、小胞体内でほぼ完全なブラウン運動の特性を示し、熱運動であるかは証明できてないが、拡散自体に異常性は見られない。これに対して、N型糖鎖が結合したものは、複雑な動きを示し、jump distance analysisで観察される遅い動きは、軌跡の平均二乗変位がt^a(2>a>1)である特性を持つものが多く、蛍光相関分光法(FCS)により観測される遅い成分は、実は膜成分への単なる一時的な結合ではなく、移動距離のより長いflowの動きを反映している可能性が示唆されてた。この動きは、タンパク質合成とは無関係であり、latrunculinでほぼ阻害される事から、先に提唱した、アクチン細胞骨格は、糖タンパク質のfence and picket modelで説明されるような障壁として機能するというよりは、アクチン骨格がモーター分子と受容体を介して、糖鎖が結合したカーゴ分子の積極的な攪拌を引き起こすというモデルの方が適切かもしれない。この点について、さらに証明を試みている。
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