1. 上衣繊毛運動の極性獲得 : 上衣細胞繊毛の運動機能獲得過程と繊毛基部の分布の関係を明らかにするため、繊毛基部をGFPで標識したトランスジェニックマウスを用いてイメージングを行った。新鮮脳サンプルに対して細胞膜を色素により標識し、繊毛を可視化し高速度コンフォーカル顕微鏡にて撮影した。その結果、繊毛基部が成熟とともに分布変化し、それに伴って繊毛運動の極性と協調性が確立することが明らかになった。 2. 培養上衣細胞を用いた解析 : 培養下にて上衣細胞を高効率に分化させる方法を確立し、神経幹細胞からの上衣細胞の分化・成熟過程を解析した。その結果、分化から10日で成熟した繊毛を有する上衣細胞が生じることを見いだした。このことは、脳内では生後1週間までの間に上衣細胞が繊毛を成熟させることと類似しており、繊毛成熟過程を調べるための系として適していると考えられる。 3. 平面内細胞極性コア遺伝子群の関与 : 上衣細胞の極性を制御する因子の候補としてPCPコア遺伝子群の発現を調べた結果、膜蛋白質Strabismusl、エフェクター分子Dishevelled2、受容体蛋白質Frizzled3が上衣細胞の分化過程において、強く発現することを見いだした。これらの遺伝子産物の機能を調べるためにドミナントネガティブ型変異体およびshRNAを発現する高効率レンチウイルスを作成した。これらのウイルスを生後1日のマウス脳室内に注入し生後20日で上衣細胞の形態を調べたところ、対照群に比べて差はみられなかった。この結果は、これらの遺伝子群の機能阻害が繊毛の形成自体には影響を及ぼさず、極性形成に関与する可能性を示唆している。
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