研究概要 |
クライオ電子顕微鏡像を単粒子解析し,20Å分解能でアクチン上でのトロポニンの位置とそのCa感受性移動を明らかにし,筋弛緩時にはトロポニンから分子質量が約6kDaのアーム状領域が突出しアクチンに結合していることを明らかにした(Narita, et. al.,J.Mol.Biol.,2001)。トロポニンの3者複合体(TnT2,TnC,TnI)のNMR分光法を行い,トロポニンのアクチン結合領域の原子構造を明らかにした(Murakami, et. al.,2005)。この領域はTnIのC端領域(Lys131-Ser182)に対応する。この領域の原子構造をクライオ電子顕微鏡三次元密度マップにドッキングし,アクチン・フィラメントとトロポニンのアクチン結合領域の相互作用の原子モデルを初めて構築した。この結合インターフェイスのトロポニン側は家族性心筋症変異の多発部位であり,機能的・医学的な重要性が裏付けられた。さらに,トロポニンのコアドメインの結晶構造を電顕マップにドッキングし,トロポニン全体とアクチンの関係を示す原子モデルを構築した。このモデルによると筋弛緩時にトロポニンのコイルドコイル領域がトロポミオシンを押している。私達の単粒子解析によると,トロポニンはトロポミオシンのC端領域のみを押しており(Murakami, et. al.,2005),電顕からの結果(Narita, et. al.,2001)とも一致する。今回,カルシウム濃度に応じて生じるこのようなトロポミオシン分子のナノメータ・スケールの移動をリアルタイムで追跡するためにトロポミオシンにQドットを用いて蛍光標識しトロポニンとともにアクチン・フィラメントに組み込んだ。標識はトロポミオシンに導入したCys残基を利用して行った。ケージドEGTAを用いてUV照射によってカルシウム濃度を変化させた際に,Qドットの移動を観察できた。
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