これまで出芽酵母をモデルに、真核生物の線状染色体の末端を構成するテロメアの機能制御機構に関する解析を行ってきた。今年度は、テロメア構成タンパク質の動態とその時間的、空間的制御に関する解析を進めた。以下に今年度得た知見について述べる。 1.細胞周期におけるリン酸化制御 テロメアタンパク質Cdc13およびStn1は細胞周期がS期からG2/M期に進行する際に電気泳動度の遅い分子種が出現する。これらの変化はリン酸化修飾であり、そのリン酸化にATMファミリータンパク質Tel1とMec1、およびCdkであるCdc28が関わっていることを見いだした。Tel1/Mec1によるリン酸化は細胞周期のG1期においても存在し、テロメア複製が進行するS期において増加する。一方、Cdkによるリン酸化は細胞周期のS期以降で観察された。これらのリン酸化はテロメア伸長に正の作用をもつことがわかった。 2.Stn1のチェックポイント抑制活性とテロメア複製 STN1の過剰生産により細胞のDNA傷害感受性が昂進することを見いだしている。Rad53の電気泳動度を指標に、STN1の過剰生産のチェックポイントに対する影響を検討した。その結果、フレオマイシン処理によるDNA損傷時と、ヒドロキシウレア処理による複製阻害時とで、Rad53の挙動が異なることが見いだされた。複製阻害時の挙動から、Stn1が複製フォークが停止したのちの複製再開過程を調整する活性をもつことが示唆された。 3.Cdc14ホスファターゼによる制御 Cdc14はM期の後期においてテロメア領域の分離に必要なことがわかっている。Cdc14によって脱リン酸化される標的タンパク質の検索を行い、Cdc14の制限温度下で高リン酸化状態に保たれるテロメアタンパク質を見いだした。
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