核膜の内膜を裏打ちするラミナの構成蛋白質であるラミンは、生化学的性質および細胞周期における動態の違いなどからAタイプとBタイプに分類され、脊椎動物の初期胚ではBタイプのみが発現することが知られている。ツメガエル卵では、初期胚型サブタイプであるラミンLIIIと体細胞に一般的なラミンB1が約13:1の割合で発現するが、これら2つのラミンBサブタイプの役割の違いについては不明な点が多い。また、体細胞ではラミンBの多くが膜結合性として存在し、膜結合性ラミンBが核形成に重要であることが示されてきた。しかしながら、ツメガエル初期胚においては、わずかにB1の15%程度が膜結合性として存在しているのみでラミンBのほとんどが膜に結合しておらず、初期胚における膜結合性ラミンBの役割は明らかではない。そこでH19年度の研究では、ツメガエル初期胚の膜結合性および非膜結合性のラミンBが、各々核形成にどのように関わるのかを調べた。その結果、膜結合性のラミンB1は核形成の初期にLIIIに先立ってクロマチンに結合し、ラミンLIIIは核膜形成後に核輸送依存的に急激に核に取り込まれることが判明した。また、各々のラミンBサブタイプに対する特異抗体を用いて卵抽出液からの免疫除去を行ったところ、LIIIとB1のどちらを除いても核の成長が著しく阻害され、DNA複製や核輸送が行われなくなることが明らかとなった。さらに、ラミンLIIIを除去した卵抽出液は膜成分を除いた卵抽出液(可溶性画分)を加えることによって核の成長が回復したが、ラミンB1を除去した卵抽出液では可溶性画分を加えても核の成長が回復しなかった。以上の結果により、初期胚における核形成には、主要なラミンBであるLIIIに加え、膜結合性のラミンB1が重要な役割を果たしていることが強く示唆された。
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